「風立ちぬ」の美しい時間
THE WIND RISES
スタジオジブリ 宮崎駿さんの新作「風立ちぬ」を観てきました。
ポール・ヴァレリーの詩の一節
”風立ちぬ、いざ生きめやも”
自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物の
美しく流れる時間に寄り添う映画です。
私はゼロ戦という戦闘機は知っていても、それが世界に傑出した
神話と化した戦闘機であったこと、さらにその設計者が堀越二郎という人物で
あったことは知りませんでした。
前半は、そんな美しい飛行機を作ることに憧れた少年が青年になり、
自分が思い描いた飛行機つくりの夢を実現させていく物語です。
中盤からは、妻となる女性との愛情物語が融合され、
夢と情愛と挫折が入り混じって進んでいく重層的な、しかし重苦しくない
まさにタイトル通りのさわやかな風が吹くような映画です。
宮崎駿さんはもう70歳は超えていらっしゃるけれども、
昭和初期の恋愛を本当に清々しく、さわやかに情感のこもった
セリフとタッチで描かれていたので、私は目の前の作品に没頭しながらも
実は、宮崎駿さんご本人の瑞々しい感性に感動するばかりでした。
また、事前にマスコミで公開された、堀越二郎役の庵野秀明さんの声優、
この抜擢には賛否両論ありましたが、私は宮崎さんが何人もオーディションを
していながら、なかなか決まらず、最終的に庵野さんに決めたその理由が
作品を見てなんとなく理解できました。
つまりは、庵野さんだけがものすごく素人っぽく浮いていて、
それが実在の人物としてのリアリティさを逆に出していたような気がしたからです。
だって西島秀俊さんの本庄役、西村雅彦さんの黒川役は本当にうまいと
思いましたもの。
さらに宮崎さんは、映像についての覚書でこんなことを言っています。
「大正から昭和前期にかけて、みどりの多い日本の風土を最大限美しく
描きたい。空はまだ濁らず、白雲生じ、水は澄み、田園にはゴミひとつ
落ちていなかった。一方、町はまずじかった・・・・・」
「となりのトトロ」で見たような田園風景や、「コクリコ坂から」で見たような町の風景や
議論する学生たち、「紅の豚」で見たような飛行機と空、
「魔女の宅急便」でみたようなのびやかな空やトンボやキキような人、
そしてもしかしたら、メイちゃんが大きくなったら加代(妹)みたいな人だったかと
思う愛すべき登場人物たち。
これはもう宮崎さんのたくさんの美しい愛がつまった映画です。
そしてもしかしたら、ご子息の作った「コクリコ坂から」に青年時代のお気持ちを
インスパイアされ、鼓舞されて作られた部分もあるかしら・・・などと
思いながらこの映画を堪能しました。
あっと、いう間の2時間です。
途中、ハンカチがいる方も。
人間はひとりで生き、ひとりで死んでゆく・・・、ならばできるだけ美しく夢に
忠実に!
まさにさわやかな風が木立や草原を吹き抜ける作品です。
たくさんのご著書を読ませていただいている内田樹先生の感想がこちらに!
http://blog.tatsuru.com/2013/08/07_1717.php
さすがに鋭い解説・・・
ゆったりとした時間をお楽しみください。
それから、私の専門分野の色彩についても次回書きたいと思います!
二郎のスーツの色、和装、町の色・・・など。
| 固定リンク | コメント (8) | トラックバック (0)
最近のコメント